こんにちは、MSLABOです。
報告・連絡・相談をこまめに行いなさい。部下をよく指導しなさい。部署内でのコミュニケーションを取りましょう・・・ある程度の規模がある会社に務めていると、どれも良く聞くことではないでしょうか?。
私の務めている会社でも、よく耳にします。報告・連絡・相談は必須です。コミュニケーションを密にする名目で飲み会が開催されたり(笑)、異なる部署間での半強制的な社内人材交流なども行われることがあります。
程度の差こそあれ、そんな事はある程度の規模がある会社では、どこでも一緒じゃないのか?・・・と思っていました。
岐阜県にある電気設備資材メーカーの「未来工業」。社員数は1100人あまり。社員数からだけ見れば中堅どころの会社です。ところが、この会社は故:山田 昭男会長の元で、非常にユニークな経営を行い、「日本一社員が幸せな会社」と呼ばれているそうです。
(URL:未来工業 株式会社 様)
社員が幸せなだけではありません。資本金70億円、連結売上354億円。経常利益は平均13%。昭和40年の創業以来、赤字なし!・・・。1100人の従業員で354億も売上げている。経常利益率も優秀。ものすごい会社なのです。
そんな会社は、さぞかし残業やノルマが厳しいのだろうと思いきや・・・これがまた、ぜんぜん違う(汗)。
「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”:山田 昭男:ぱる出版」を読ませて頂きましたが、この会社にはユニークな決まりが数えきれないほどあるのです。
●残業は原則禁止
●ノルマも禁止
●報告・連絡・相談禁止(笑)
●1日の労働時間は7時間15分。PM16:45には帰宅可能(うは・・・)
●パートや派遣社員なし。試用期間もなし。全員即正社員!(えええ・・・)
●年功序列で、非成果主義
●安くないと売れないなら、売らなくていい。他社と差別化し付加価値をつけろ(ぐは・・・)
●会社全体が黒字なら、個々の製品が赤字でも構わない
●出張に行くのに上司の許可不要。領収書不要。固定の出張費を渡すので、工夫次第で「浮かし放題」。会社もそれを推奨(まじですか・・・)
●定年は70歳。しかも「ある年齢」に達したら給料を下げるなんて事はしない(ひー)
上記は、本に紹介されていたほんの一部です。どんな会社じゃーーと叫びたくなるくらい、なんとも破天荒な会社なのです。
山田さんによれば、全ては「経費削減」と「社員の満足度を向上させる」為の施策なのだとか。
●厳しいノルマを設ける
●成果主義で、毎年右肩上がりの目標設定
●報告・連絡・相談を徹底させ、僅かなリスクも摘み取る
●赤字プロジェクトは、理由によらず許さない
●60歳を過ぎたら給料は下げる
●安いパートや外注会社を多用し、社員は外注管理作業に徹する
●場合によっては違法スレスレのサービス残業をさせてでも利益を上げる
(あれ・・・これじゃまるでうちの会社だぞ:汗)
そんなブラックやグレーな企業が多いと言われる中、日本にある約965万の会社で、経常利益が4000万円以上ある会社は「わずか3%ほど」しかないのだそうです。つまり、そこまでしても「ほとんどの会社は、たいして儲かっていない」。
なぜなのでしょう・・・。社員が怠けているからなのでしょうか?。
山田さんの答えは違います。それは「そんなやり方が間違えているから」。社員が「この会社のために頑張れば、自分たちにも良いことが回ってくる」と実感できる会社だからこそ、業績が伸びるのだと書かれています。
例えば報告・連絡・相談が禁止なのは
●現場で何が起こっていて、どうすべきかを一番知っているのは実務担当者だ
●会社で管理しかしていない上司に、適切な判断ができる筈がない
●いちいち上司に報告・連絡・相談していては、対応が後手に回ってしまう
というのが、その理由なのだそうです。
刑事ドラマの「踊る大捜査線」で、主人公の織田 裕二が、警視庁の会議室で大型モニターを前に「ああでもない、こうでもない、誰の手柄にするんだ」と議論ばかりを重ねる上司に、「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」と叫ぶシーンがありますが、まさにそんな考え方ですね(笑)。
思うに「なんでも管理しなければ、うまくいかない」と考える社長さんは、「社員なんて、放っておいたら怠けるだけで、信用出来ない」と考えているのかもしれません。放っておいたらトンデモナイ事をしでかすかもしれない。だから不安でしょうがないといった感じでしょうか?。
でも山田さんは真逆を行きます。
まず社員を信頼します。社長の力なんて大したことがない。自分1人で出来ることには限界がある。だから社員の協力がなければ、会社がうまくいくはずがない。それならば、少しでも社員が会社に協力したくなるような環境にするのが社長の役目だと考えるのです。
「いったい会社は誰のものなのか。客や仕入れ先、株主というのもその通りだが、なによりもそこで働く社員のものだ」。これは山田さんが語った言葉だそうですが、この言葉に彼の思いが凝縮されているようです。
(参考URL:J-Net21 様)
『経営とは、経営者と従業員が、その職場を通してお互いに信頼協力、全能力を発揮して社会に貢献する一方、お互いに経済生活を確保する共同の場でなければならない』
古泉 榮治:亀田製菓 創業者
実はとあるキッカケで、山田さんご本人から話を聞かせて頂く機会がありました。まるで漫才師のような愉快な喋りで、1時間余りの講演が一瞬に感じられるような素晴らしい会でした。
その中で印象的だったお話。
未来工業にも幾つかのコンピュータ・システムが導入されています。未来工業では、システムを構築するために、複数のIT会社にシステムの提案を依頼しました。そして依頼をおこなった企業から、とあるメーカー(A社)を選びます。
さて、沢山声をかけたメーカーの中から、当時社長だった山田さんがA社を選んだ理由は何だったでしょうか?。あなたが未来工業の社長だったら、どんな理由でメーカーを選定するでしょうか?。少し考えてみてください。
ちなみに・・・そのシステムの価格がいくらだったかは知りません。しかし、ちょっとした会社のそれなりの事務システムとなると、数千万円になる事もあります。つまり、安い買い物ではないと思ってください。
少しだけヒントです。山田さんがA社を選んだ理由は
A社が提案したシステムが一番安価だったから でしょうか?
・・・普通は、選定理由としてこれが一番多いように思いますが、山田さんは違いました。
A社の提案内容(提案された機能)が一番優れていたから でしょうか?
・・・これもよくありそうな答えです。でも、山田さんは違いました。
A社の営業マンやエンジニアの人柄に惚れたから でしょうか?
・・・ユニークな社長なら、ありそうな話です。でも残念ながら、これも違います。
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
山田さんいわく。オファーした会社の中で、A社が一番最初に話を聞きにきたからだそうです。一番乗りだったのでA社に決めた・・・。ぐはぁああああ、ありえません(笑)。
山田さんは、その理由をこう述べられていました。
「俺はコンピュータの事なんて全然わからない。だから説明されても、良し悪しなんて判断できない。声をかけたメーカーは、どこも一流メーカーだ。だから、どこを選んでも大差なんてない。よって、一番最初に来たメーカーに決めた。うちみたいな中小企業に、一番最初に話を聞きに来るという事は、それだけやる気がある証拠だ」。
『人間の能力というのは、そんなに大きな差はない。人の能力の差なんて、天才は別にして、秀才まで入れても最高5倍、普通は2倍ぐらいだ。しかし、やる気の差は100倍ある』
永守 重信:日本電産創業者
参りました・・・。
なんとも筋が通った潔い決断です。私が社長だったら、こんな素敵な決断はできなかったでしょう。
人を信頼する。まかせる所は、おおいにまかせる。そこから生まれる社員のやる気を大切にする。やる気が出るような環境構築に全力を注ぐ。山田さんからは、組織の上に立つ者の心構えを教えていただけます。
では個人として見た場合はどうでしょうか?。自分自身を信頼する。「俺ならやれる」と思う。自分が大好きな事や自分の気持ちを大切にしてあげる。自分を信頼し、自分を愛する事で、初めて「やる気」が奮い立つのではないか?。
「『感謝の言葉を忘れない』『人と違うことをする』というのも、確かに大事だと思います。しかし一番大事なのは、『自分を信じること』ではないでしょうか」。
これは現在の未来工業の社長を勤める山田 昭男さんの息子 雅裕さんの言葉です。
(参考URL:注目企業.com 様)
個人であっても、1人社員の1人社長みたいなものだと思えば、同じ道理が通じそうです。自分の事を信頼し、自分がやる気になる環境を何よりも大切にする。私も自分に当てはめてみたいと思いました。
名古屋:伏見のオフィスより感謝を込めて。
長い文章を読んで頂き、ありがとうございます。あなたによきことが雪崩のごとく起きますように。
今日の学び:社員の力が企業の力。心地よいを大切にせよ
今日の箴言:
古泉 榮治:亀田製菓 創業者
永守 重信:日本電産創業者
今日の書籍:日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”:山田 昭男:ぱる出版
今日の写真:illust-AC 様:えびてんさん