こんにちは、MSLABOです。
時間がたつのは本当に速いものです。子供の頃は1年がずいぶんと長く感じました。でも中年になると、文字通り飛ぶように時間が過ぎていきます。
今日のポイント
貯めているの?、無くしているの?
サラリーマンを辞めてから、あっという間に半年がたちました。
この半年で、いろいろな事がありました。でも、はたして自分が思い描いていた行動が取れているのかどうか・・・。時間だけが過ぎ去り、預金残高は減少し(汗)、焦りだけが残ったように感じます。
現代というのは、効率と生産性を高めることに重点を置く社会です。早い、安い、うまいの牛丼ではありませんが、少しでも早く(要領よく、効率的に)、少しでも多く(生産性が高く、安く)が合言葉になっています。
それは確実に、私達の生活を変化させています。
たとえば相手の会社に問い合わせる時、昔なら電話をかけるのが当たり前でした。でも今は電子メールで事が足ります。
最新の情報を入手するのに、テレビや新聞は使わなくなりました。WEBで検索した方が、ずっと便利で早いからです。
買い物はAmazonでポチるかネットスーパーを使えば、クリックした商品を家まで届けてくれます。まさに指先1つで手間いらずです。
(画像URL:photo-AC 様:acworksさん)
私がいた大手企業では、社内会議でさえオンライン化されていました。すこし極端に言えば、もはや対面での会議は時間と経費の無駄使いになっていたのです。
こうして世の中はどんどん便利になっています。別の言い方をすれば、私たちは昔に比べて沢山の時間を節約しているというわけです。
それでは、こうして節約した時間を使い、私たちは人生を楽しめているでしょうか?。昔に比べて、これだけ時間を節約しているのですから、さぞかし時間に余裕ができて、豊かになっていても良い筈です・・・。
ところが現実は、その真逆になっているように思います。いつも何かに追い立てられているようで、セカセカしていて、疲れている気がします。
その証拠に、旅行に行きたい、家族と過ごしたい、たまにはゆっくりしたい、久しぶりに旧友と会いたいなどと思っても、いつも決まって次のような言葉が口をついて出てきます。
「今、忙しいんだ。時間がない」
「また今度、余裕ができた時にしよう」
いったい節約した時間は、どこに消えてしまっているのでしょう?。
時間泥棒に気をつけて
この事をわかり易く物語にした本「モモ:(著)ミヒャエル・エンデ、(訳)大島かおり:岩波少年文庫」を読みました。
この本は、効率化してたっぷり貯まった筈の時間が失われていく様子を、時間泥棒が私達から時間を盗んでいる仕業だと考え、それを取り戻してくれた少女モモを主人公にした児童文学となっています。
児童文学ですから、本来は子供に向けて書かれた本です。でもこの本は、どちらかというと現代の大人達にこそ読んで欲しい、そんな内容なのです。
人生は有限で、時間が限られていることは誰だって知っています。だから「時間は大切だ」と言われて、正面きって反対できる人はそんなに多くはないでしょう。
でも、ここに罠があるのです。
物語の中で、時間泥棒は街の大人達にこうささやきます。「君の生活を豊かにするために、時間を節約しよう(中略)。時間は貴重だ。むだにするな!。時は金なり。節約せよ!」。
(画像URL:illust-AC 様:acworksさん)
どこかで聞いたことがある言葉ですね(汗)。
物語の中で、時間泥棒たちの言葉に従い、時間を節約するようになった大人たちには、こんな変化が起きます。
- 沢山稼いで、お金持ちになる
- 身なり(服装)や持ち物が立派になる
- 大きな車を所有し、綺麗な家に住むようになる
でも、それと同時にこんな変化も起きるのです。
- いつもなんだか不機嫌になる
- くたびれていて、怒りっぽくなる
- 夢を見たり、語るのは犯罪だと思う
- 家族と過ごしたり、子供にかまう時間がなくなる
- 静けさや孤独を不安に思い、落ち着かなくなる
- 余裕ができても、何をして良いかわからなくなる
『便利という価値観に負けては、人間社会本然の大事な部分を見失ってしまう』
池波 正太郎:小説家
こうして時間を節約するようになった大人は、誰かの事を思って心をこめたり、手間ひまをかけて物を作ることが無くなります。そんな事よりも、少しでも早く、効率よく、パッとやる事が大切になるからです。
例えば、のんびりと景色をみながら食事をしなくなります。ファーストフードで手軽にすませて、さっさと仕事に戻るのです。
余裕をもって出かけることができなくなります。そんな時間は無駄に思えるからです。だから少しでも渋滞したり電車が遅れると、イライラして文句を言います。
子供たちが無意味な遊びに時間を使うのが許せなくなります。そんなことより、大人たちが将来のために役立つと考えることを、先を競うように覚えさせようとします。
(画像URL:photo-AC 様:RRiceさん)
どうです?、あなたの周りにもこんな大人が沢山いませんか?(汗)。
また時間泥棒は、こんな事もささやきます。「人生で大切なことは一つしかない。それは、なにかに成功すること、(中略)たくさん物を手に入れることだ」。
そしてこう続けるのです。
「他の人より成功し、偉くなり、金持ちになった人間には、その他のもの-友情だの、愛情だの、名誉だの、そんなものはなにもかも、ひとりでに集まってくるものだ」。
私は時間泥棒たちのこの言葉を読んで、背筋が寒くなりました。だって、そこに書かれた大人たちとその価値観は、私達の生活そのものだったからです。
エンデは次のように書いています。「時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつの何かをケチケチしているということに、誰一人きがついていない」。
私達がなくしているもの
では時間泥棒に盗まれた時間は、どうやったら取り戻すことが出来るのでしょうか?。
そのためには、私達が時間をケチケチすることで、なにを失っているのかに気がつく必要がありそうです。
なぜなら、自分たちが何を失っているのかに気が付かなければ、それを取り戻す事などできないからです。
私達が失っているものとは
- 人を思いやる心 や
- 自然を楽しむ心 や
- 今を楽しむ心
ではないかと思います。
『人生とは今日一日のことである。』
デール・カーネギー:講演家、偉大な自己啓発者
たしかに私達の時間は限られています。
そして豊かで便利なことは嬉しいものです。だから時間を大切にし、便利になるよう工夫をする事は重要です。でも、そこに「心」が抜け落ちてしまっては、元も子もありません。
心を失わないために、そして心を豊かにするためには、一見無駄に思えるような「ゆっくりとした時間や、心のゆとり」が必要なのです。
ところで、モモの本には時間泥棒たちが(モモ以外で)苦手にしている人間が登場します。その人間たちから時間を盗むことに大変苦戦するのです。
それは一体誰でしょうか?。
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それは、子供たちです。
(画像URL:photo-AC 様:ちゃぁみいさん)
子供たちは、なんでも楽しく興味を持って、わくわくして取り組みます。立派なオモチャなどなくても、石ころや空き缶1つから想像を膨らませて遊ぶことができます。
いつも人生を楽しむだけの十分な時間を持っています。だから時間泥棒は子供たちから時間を盗むことができないでいたのです。
時間泥棒から奪われた時間を取り戻すには
- 物の豊かさよりも心の豊かさを
- 早いことよりも丁寧な事を
- 沢山売ることよりも沢山喜んでもらう事を
そんな心のゆとりを持つ事が必要なのではないでしょうか?。
あなたも良く目をこらしてみてください。
灰色のコートを着た時間泥棒が、コッソリとあなたの背後に忍び寄り、あなたの心から本当の豊かさを盗んでいるかもしれませんよ。
名古屋:伏見のオフィスより感謝を込めて。
長い文章を読んで頂き、ありがとうございます。あなたによきことが雪崩のごとく起きますように。
今日の学び:心を置き忘れるな!
今日の箴言:
池波 正太郎:小説家
デール・カーネギー:講演家、偉大な自己啓発者
今日の書籍:モモ:(著)ミヒャエル・エンデ、(訳)大島かおり:岩波少年文庫
今日の写真:illust-AC 様:kotobukingdom さん